アイドルと【夜の歌】-「ツァラトゥストラ」を読んで

 

今更ながら卒業論文のテーマを書くと、「多神教もしくは無宗教国家日本におけるアイドルの存在意義(仮)」というのを設定している。ちなみにわたしは哲学専攻であり専門はフリードリッヒ・ニーチェの「ツァラトゥストラ」。正直全く関係ない。

だが、アイドルと宗教の関連性について私はずっと考えていたためこのテーマを選んでは見たわけである。アイドル文化ってすごく宗教的じゃないですか、と思うのだがこれに関してはまたしっかり一つの記事にしよう。

まあ当然担当教授からは(できればニーチェとの関連があるといいね)と言われていたので必死に探してみた。いや、見つからない。というか私の探求が足りないわけだが。いやどう考えてもあの時代にアイドルなんて(多分)ないし、というかそもそも日本ではないし。

 

困り果てた私は専攻である「ツァラトゥストラ」をぱらぱらとめくっていた。どこか似たところはないか、心がつかまれるところはないか。この際本来の意味は後で考えるにしても……という本末転倒な読み方だったことは認めます。

余談だが、「ツァラトゥストラ」はアイドルファンの皆様にあまり馴染みのない文献だとは思うが、【神は死んだ】という一節はどこかで耳にしたことがあるのではないだろうか。常々思うのだが、もしSnowManの佐久間大介くんが哲学科だったら、その言葉の響きだけで専攻をニーチェに決めてたと思う。中二病っぽい響きで。雲の神クラウディアよ!(大好き)

 

ということで、あくまで字面意味だけをとらえた場合、フリードリッヒ・ニーチェ著「ツァラトゥストラ」の上巻、第二部【夜の歌】(岩波文庫版・P178)に書かれたこの文章はとてもアイドルファン心理に近いものがあるのではないかと感じ、ここにメモとして残したい。

そもそも本書の文章自体が読んでいない方にとってはなんじゃこれ感が強いと思うのだが、誰に読まれる文章でもないしあくまで卒業論文に臨むためのメモ書きとしてのブログだ。またしっかりとした考察は後々行うので、細かい指摘に関してはちょっと勘弁願いたい。

 

鎮まることのない、鎮めることもできないものが、わたしのなかにあって、声をあげようとする。愛したい、とはげしく求める念がわたしのなかにあって、それ自身が愛のことばとなる。

 

かれらはわたしから受けとる。しかしわたしはかれらの魂に触れるだろうか?受け取るのと与えるのと、そのあいだには裂目がある。そして最も小さな裂目こそ、最も埋めにくい裂目だ。

 

もちろんこじつけであることは全く否定出来ないのだが、とても直観的に読むと非常にこう、心に来る。アイドルとアイドルファンの間には一生埋まらない溝があると思うし、どうしようもない愛情と欲求を伝達可能な限り言葉に落とし込みたいと願い私たちはファンレターを書いたりTwitterやブログに思いの丈を綴っているのではないだろうか。

他者からの誤解や、時には自分の本当の感情とのズレを感じながらも。この文章を読んだ時にわたしは、どうしようもない虚無感に襲われた。アイドルとわたしは絶対に交わることはない。当然だしわかりきっていた。だけれどなんだろう、いつかきっとどこかで絶対切れてしまう関係性なのではないかと考えたらちょっと頭がぐらつく。だけれどどうしようもなく愛おしくて追いかけたくなって、相手のことを考えない期待を寄せたり不満を持ってみたりする。

好きである期間が長ければ長いほど相手に近しい存在になったような勘違いをしてしまうが、決して彼・彼女らの魂に触れるほどの距離に近づけることはないのだ。

 

…と、浅瀬で遊ぶようにさらさらと読んでいるのが現状である。

 

だがしっかりと読み込んでいても、あながち重ねることが強引な部分ではないと考えている。そもそも【夜の歌】はニーチェが主人公(語り手)のツァラトゥストラに自身を重ねて苦悩や孤独を訴えていると考えられ、誰にも答えてはもらえない他者への渇望を綴っている。

ただ、アイドルファンがツァラトゥストラと同様かといえば全くそうではない。むしろ欲と煩悩にまみれてるし。どうしたらいいんだろうね、むしろまっとうにアイドルしてるアイドルのほうがよっぽど超人に近い気がするね。アイドルファンであるという選民思想的なものを感じている人からしたら超人に近いと自負できるのかもしれないけれど私はそんな勇気がない。

ただ、ツァラトゥストラは引用箇所の感情を自分に限ったことだと言っているわけではなさそうなので、ツァラトゥストラの弟子ないしは信奉者くらいの立場には自分のことを置けるのかなと。そうしたらいよいよアイドルの立場が民衆なのかツァラトゥストラ混乱してきたしちょっとかぶせるには無理がある文献だった気もする。

なによりアイドルをツァラトゥストラ的立ち位置に置くと、情動的で感情的で人を引き寄せるけれど理解者以外はてんで嫌われがちである、っていう点がとても近いように感じるな。

 

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【夜の歌】の2文をただぼんやりと似ているなあと感じて打ち始めたブログだったのだが、いざ文字に起こしてみるとここはどうだろう、向こうとの関連は?とどんどん自分の中でマップが広がっていった気がする。

きっと1人でパソコンに向かうよりもよっぽど頭のなかが整理できた気がするよありがとうブログ。ありがとうはてな

そろそろアイドルファンの方々にお願いしたアンケート結果をしっかりと考察分析しなければならないので次か次の次くらいではその話を……。

今日はすっかりSnowMan渡辺翔太くんの誕生日を祝い狂ってしまった。本人不在のバースデーパーティー。

 

ツァラトゥストラはこう言った 下 (岩波文庫 青639-3)

ツァラトゥストラはこう言った 下 (岩波文庫 青639-3)

 
ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)

ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)