女子ドル楽曲における一人称について-スターダストプロモーション編


アイドル楽曲の一人称は様々だ。特に女性アイドルの楽曲においては、わたし(私)だけでなく、ぼく(僕)が多く用いられていることがわかる。
各グループの各曲に使われる一人称を追うことによって、ここにファンがどう感情を動かされているのかわかるのではないかと感じ、考察した。

 

※グループ全員で歌っているものに限る

→ユニット曲やソロ曲を含めないグループ曲に限定。

 

※漢字表記及び平仮名表記などは同一とみなす
→その他、「ぼくたち」と「ぼくら」なども同様

 

歌詞検索サービス 歌ネットを参考に、アーティストページに2015/11/24 19:00現在表記されている楽曲は全てカウント

→カバー曲であるももいろクローバー「Believe」や私立恵比寿中学「大爆発No.1」は含めるが、ライブで数回やったような表記のないものは除外


第一弾はスターダストプロモーション所属アイドルを発信します。

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*たこやきレインボー(http://www.stardust.co.jp/profile/tacoyaki.html)

全15曲
わたし(7)/ぼく(0)/わたしたち(2)/ぼくたち(1)/なし(3)/その他(2)
 まだまだ若手のグループだからか、一人称よりも「たこやき」や「たこ虹」、「みんな」ということばが多く見受けられた。個性やグループを売っていくためには自分やグループのなまえをどんどんだして、ファンの仲間意識というか一体感を高めたほうがいいのかしら。たこ虹でのその他は全てグループ名や略称のみで一人称がなかったもの。
 楽曲も元気やあきんど(大阪だからかな?)的なものが多くて、恋愛ソングはなし。そういえば「チョコレート・バーニング」はたこ虹の曲だと思い込んでたけど違うんだなあ。深刻な勉強不足。けどあれ歌ってるたこ虹ちゃん可愛い。

 それにしても自分たちのあのテンションを(元気の押し売り)と歌うさま*1は面白いなあと思います。たしかにテンションが高くて一見一歩引いてしまいそうなくらいの底抜けの明るさだけれど、その懸命さが時に悪い意味でなく痛々しいほどに刺さるから(元気の押し売り)の一言じゃ片付けられない感じで。

 


*チームしゃちほこ(http://www.stardust.co.jp/profile/syachihoko.html)

全47曲
わたし(11)/ぼく(1)/わたしたち(9)/ぼくたち(1)/なし(18)/その他(7)
 一人称なしが圧倒的に多くて、ここにしゃちほこのアイドルっぽさを感じた。あくまで歌で(リーマンショック以降元気のなくなった名古屋を盛り上げる!)*2という感じで、そこに自分たちがないのかな、と。もちろん自己がないとかそういうことではなく、第三者目線から(君)に訴える曲が多くて自分たちの持ってる悩みとかをあまりさらけ出さない印象。アイドルという立場からのアンセムソングが多いのかな、名古屋だとか社会だとかに対する。「(私たちは元気だけど)みんなも頑張れ!」のような前提もあまりなくて、どこか高いとこや遠いとこからのアンセムソング。

 だからこそ、恋愛曲の「シャンプーハット」や「Sweet Memories」ががつんと胸にくる。年齢相応の拙い恋愛の詞がメンバーっていう主人公を得ている感じがたまらなく刺さる。

 

 チームしゃちほこにおけるその他の楽曲

  • 「サマラバ」「Sweet Memories」→2人
  • 「いけいけハリウッド」「いいくらし」→自分次第
  • 「抱きしめてアンセム」→俺・私・私たち
  • 「でらディスコ」→メンバー名
  • 「ピザです!」→しゃちほこデリバリーピザ

 


*私立恵比寿中学(http://www.stardust.co.jp/profile/ebichu.html)

全73曲
わたし(21)/ぼく(6)/わたしたち(4)/ぼくたち(4)/なし(33)/その他(5)
 自分たちのことを主人公に歌っている曲はとても多いけれど、一人称を歌詞にしている曲が少ない、という印象。今回二人称を数えていなかったことを後悔するほど、(きみ)というフレーズが多かったように感じた。(みんな)を対象にしたものは少なくて、ひとりひとりを対象に元気な楽曲も優しく歌いあげてるイメージ。(不安定な歌唱力とキレのないダンス)*3と対応しているように思える。アンセムソングのように鼓舞するスタイルよりも(頑張ってね、君のことみてるよ)のような歌詞が多い。

 これはだいぶ歌が上手くなってキャッチコピーがそぐわなくなった現在、最新シングル「スーパーヒーロー」でも言える。これは(僕たち)という言葉が入っているものの、あまり強い言葉で鼓舞するのではなく優しく言い聞かせるような印象。他にそういった楽曲で考えると、「Go!Go!Here we go!ロック・リー」や「新・青春そのもの」も曲調はアップテンポで元気づけるようなものだけど歌詞を見ると拳振り上げる系ではない、あまり。「新・青春そのもの」に至ってはムーディーだし。
 となると、エビ中の不安定さが持つ寄り添い見守る色は、他グループにないようなものなのではないか。あまり歌の上手いメンバーばかりではないエビ中だからこその、同じ所か少し下から押し上げてくれる優しい力を感じた。

 

私立恵比寿中学におけるその他の楽曲

  • 「I can't stop the loneliness」→英語詞
  • 「I'm your maneger」→公募歌詞のため除外
  • 「歌え!踊れ!エビーダダ」→エビ中・エビーダダ
  • エビ中出席番号の歌その1」→メンバーの名前など
  • 「大漁恵比寿節」→俺ら

 


*ももいろクローバーZ(http://www.stardust.co.jp/profile/momoclo.html)

(ももいろクローバー時の楽曲も含めて)全81曲
わたし(22)/ぼく(8)/わたしたち(3)/ぼくたち(9)/なし(34)/その他(5)
 楽曲の系統が幅広いです、お姉さんがた(第一声)
 純粋なアンセムソング系が多くて、これはやっぱりグループカラーなんだろうなと。世間的には最初の印象がカナコのエビ反りか激しいダンスから入ってる人が多いと思うので-5TH DIMENSION以降?はなんかこう、大人しいというかちょっと毛色が違うけど-引き付ける力が強いのかな。「労働讃歌」とか「BIONIC CHERRY」とか「PUSH」みたいなガムシャラ頑張れ系が多い。これはエビ中を見てから歌詞を読んだからかより一層感じた。
 それもただのガムシャラ頑張れ系というよりも、もう少し感情を一体にして動かす感じで、誤解を恐れずに言うと宗教色が濃いように思える。「GOUNN」だとかはもう露骨に仏教色なんだけれど、それ以外も語気がわりあい強くて奮い立たせられるような雰囲気。その他の一人称楽曲(下記)に(我ら)というワードが多く見受けられるように、ももクロが先頭に立って先導してゆくような楽曲が多いように感じられた。

男性が一番感情移入して読めるのではないだろうか。庇護欲をかきたてられるようなか弱さとか繊細さが良い意味で薄い。老若男女に向けて喝を挿れるような楽曲が受け入れられるのは、ももクロのファン層が厚いことを表しているように思えた。

 

 ももいろクローバーZにおけるその他の楽曲

 


今回一部のスターダストアイドルは楽曲数の少なさと私の知識不足で除外した。

(ばってん少女隊・ときめき☆宣伝部など…これからチェックするよ!Twitterは見てます!)

 

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 スタダのアイドル楽曲は全体的に一人称がないものが多かった。一般の楽曲がどれほど一人称があるのか数えたことがないので何とも言えないが、ジャニーズって割りと(僕・俺)(僕たち・俺たち)って多く入っているイメージがあるのでこれは男女差なのか、それともわたしが多いと思い込んでいるだけなのかちょっとわからないけれど。ちなみに(わたし)と(ぼく)どちらが多いかという点はどのグループも(わたし)が上回っていた。

 一人称がないというのは、その楽曲の世界観に自分が主人公として入り込む余地があるかどうかのように思える。一人称がある楽曲はある程度歌っている人間が主人公となっていてその世界観を覗きこむような感覚や、先導してもらったり応援してもらったりという要素が多いとおもうのだが、一人称がない楽曲では主人公になることが出来る。*4置かれていない(わたし)という存在を自分に置き換えたり解釈したりすることが出来るのではないだろうか。

 そういった仮想世界のような物語に入り込める余地は、アイドルにとって重要なのではないかと感じた。アイドルたちのみの世界ではなく、アイドルとファンでひとつの世界を構築するような感覚。よくあるやつだ、手を繋いで俺達とみんなで☆☆☆みたいなそういうやつ。これは男性アイドルの例だけど女の子でもある。ファンを含めてグループが成立する、というような感じ。

 現段階ではスターダストしか分析していないのでもしかしたら事務所の色みたいなものがあるかもしれないので一概には言えないが、これもひとつアイドルの持つ物語の重要性に関わるのではないかと考えられる。

やっぱり他の系列も分析しておく必要がありそうだ…楽曲多いよ……!

 

*1:「元気売りの少女」~浪花名歌五十選~」の歌詞にて

*2:チームしゃちほこのスローガン

*3:私立恵比寿中学のキャッチコピー

*4:もちろん楽曲によることは重々承知しているが